徒然ブログ 風まかせ筆まかせ

日々の気づきと雑感 食べもの、映画、本に天気が多いです

読了 長月天音著『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』

週の中日は、1時間早出の勤務開始。ほとんど先着がいない職場の窓を開けてややひんやりした風を入れるのは心地良い。

怒涛の半日4時間勤務を終えて11時半。午後からの用事に向けて、スキマ時間は読書に勤しむ。

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長月天音著『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』

図書館の最新刊からタイトルとあらすじ案内に惹かれて予約して読んでいたもの。

葬儀会館に勤める大卒1年目の彼女が先輩からの教えを受けながら、様々な人の見送りの場面を通して、逝った人、残された人、関わった人の気持ちを知ったり、推し量ったりする中で、生きることと死ぬことを考えたというもの。

病死、不慮の死、行方不明のまま、その時、その直後、それから、同じことはひとつとしてない、その人、その家族のみの様相。主人公は死という当該者には非日常を日常的に見ていても、それでもやはり個々の死。時には穏やかに時にはいきなり現れる不確実ながら、究極的には確実なものをどう受け容れるのがいいのだろうかを、読みながら考えさせられた。魂の帰結する場所を作って置いてあげる心持ちがあればどんな死でも、最後は受け容れることになるのだろうかとか、その時が来るまでは、時間の流れに任せることも必要なのかもとか、色々と考えさせられた。舞台がスカイツリーを近くに見る場所で、それがシンボルのように描かれているのも、何か帰結するもの、拠り所とするものを表していて、いい演出道具と感じた。

心に残った言葉としては、

先輩社員

「誰しも関わった人の心に、何かしら生きた証を残して、消えていくものだな。」

結婚を約束していた彼が海から上がってこないまま6年が過ぎて、区切りをつけるために来た海でその彼女が言った言葉は、

「この先は、もっともっと新しい世界を見たいと思います。海路君とした約束の、その先の世界を私が見ることを、どうか許してください。」

皆、区切りをつけるというか、つけることで、とりあえず前に進んでいく、進んでいくことにするんだなあと。

10年前、母が亡くなった時、その時の父の気持ちや行動はどうだったのか、葬儀の時、父も妹も自分もどういう気持ちだったのかなあと、どうしても振り返ってしまう。

それと共に、生きていることのありがたさとはかなさを感じつつ、はかないゆえに、究極的には、優しく精一杯生きることしかないのだろうと、この本を読んで思った。そうして葬儀は区切り。区切りの意味なんだろうなとも。

途中、枝豆おにぎりに、刻んだベーコン🥓が入って、バターと黒胡椒の風味が美味しさを引き立たせているという記述があり、これからの季節、作ってみたい一品を知らせてくれたのが、ニンマリできたポイントになった。

久しぶりの外でのランチは近場の中華料理店へ。酸辣湯麺のとろみが、その下の熱さを知らんぷりにしたまま、優しくほんのり湯気を立てている。いきなり訪れる熱さと酸っぱさが六月の暑さを加速させる。

涼しくなったのはその後の美容院。出たら図書館への返却前に、最後の読み込みの追い込みをここでかける。

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人気まばらなタリーズのベンチは、程よく初夏を感じる風を受け、雑踏の音が鳥のさえずりにさえ聞こえてきた。

こうして、読み終わる頃には仕事を定時で済ませた人が行き交い始め、平日ながらの日常に自然に戻っていった。