寒い予報の下、黒ジャケットにミントグリーンのセーターのいでたち。職場で2人から、ビビッドな色と言われる。
返事は決まって、「顔と性格が地味なので、その分服は目立つ色にしてます!」としている。本音と建前の絶妙なバランス感を保った模範解答なり。
そんな日は、いつものシアターの2番目に小さいスクリーンの最後列で、映画『火口のふたり』を観る。白石一文の原作というだけで、充分興味をそそるもの。本の表紙の赤いギトギトした絵は、この人の作品を読むのに、いつもどこかにえいやっという覚悟を迫る・求められる感があるが、これもそれを表していて未読だった。
愛についての、高尚と低俗、希望と現実、本音と建前、刹那と永遠、といった両端ながら同時に存在するものとして、捉えることができるようなもの、そう考えさせられる作品だった。ほぼ2人の会話で進んでいき、自然な会話と仕草が両主役の演技力の高さを表していた。永遠を求めて刹那を味わうことと、刹那の積み重なりで永遠を感じようとするのは、同じものなのかもしれない。そんな考えも抱かせる作品となった。ゆえに、館内は映画好きというより、白石一文ファンでは?というような観客が多く占めているように思えた。
今回は、いい作家のいい作品を、いい役者が演じて、いいものの相乗効果となった。こういう嬉しい出会いに感謝したい。